バイリンガル短歌 * my bilingual tanka

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International Tanka 2020年5月号(↑ クリックすると読めます*click to enlarge

 

「パリのノートル・ダムに寄す」(仏訳*日本語は『短歌人』7月号で既発表)

「葡萄唐草」(馬場あき子『葡萄唐草』より英訳*連載中)

 

今号より表紙が青から緑になりました

短歌誌もけふ衣更へヴェロネーゼの緑(Vert Véronèse)の風が表紙をめくる

 

Véronèse de Alessandra Zamperini - Beau Livre - Livre - Decitre

 

ヴェネツィア派の画家、ヴェロネーゼ(google search)

 

 

 

虞美人草

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命なきコロナウィルスが鳥獣人(とりけものひと)の命を借りて増えゆく

 

人類がスローダウンし大空は日ごとに青く澄みゆくらしも

 

除草剤撒かれざる夏トスカーナの野の雛罌粟はいよいよ赤く

 

(『短歌人』2020年7月号に掲載の5首より3首)

 

 

ミモザの蕾

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ヴェネツィアのペストを防ぐマスケラが白きマスクの祖先なりけり

 

黒死病のフィレンツェ逃れ郊外へ十日物語(デカメロン)に香る野の花

 

三十年(みそとせ)前われのマスクに泣きし子よ今も住まふやブッダガヤーに

 

マンションで踊りテラスで手を振りあひ春をこもれる武漢少年(ウーハンシャオニェン)

 

金いろのミモザの蕾とげ生えてコロナウイルスおもはするかも

 

(『短歌人』2020年6月号)

 

 

黄八丈

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一本の蛇の目の傘の雨ぱらぱら若き二人が朝橋わたる

 

もの言はぬをとめでありし新妻の着物は黄(きい)に格子のもやう

 

いつもより無口なる夫(つま)下駄の緒に気をとられしか雨を聴きしか

 

末子(おとんぼ)と嫁のふたりを迎へたる温い煮染(にしめ)のお膳がふたつ

 

なき母とおなじ世代の友がいふ着物はきつと黄八丈でせう

 

(『短歌人』2020年5月号)

 

 

 

 

花篝*flower bonfire

Led

(2020年4月)

 

この春のさくらはさぶしLED街灯ひとつ花篝(かがり)として

 

cherry blossoms 

look lonesome

in 2020

with one LED streetlight

as a flower bonfire

 

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朝陽をかがり火とする蔓薔薇(4月)

 

ちり紙のバラこさへたる新学期さらさら遠し今年の春は

 

短歌人」第42回ネット歌会詠草を改作)

 

 

 

 

さくらはじめてひらく(桜始開)*the first cherry blossoms

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(3月25日撮影)

 

うす紙でこさへし薔薇の花もなく卒業式もなき春あはれ

 

InventionBWV773の黒鍵音符に印をつけ先生から「花見の如し」と咲はれたる思ひ出を詠める


お花見のやうな幼(をさな)のインヴェンション♭(フラット)かこむ うすべにの 〇(まる)

Invention No.2

in my childhood

with pink marking

around the notes of black keys

like cherry blossoms in full bloom

 

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クリックすると楽譜がよくみえます(斎藤寛さんのブログで紹介して頂きました → 

 

フランスに住む俳人、小津夜景さんのブログで紹介して頂きました。→ ♬(音符をクリック)

 

 

 

 

ミチクサ先生とノボさんと

ももさへづり*うた暦*Cent Chants d' une Chouette

 

業平も子規も臥せをる新聞の小説を読むベッドのそばで

 

口細く胴体まろく坐りよき吸飲みうるはしこれぞ用の美

 

二十日臥す父にゴルフのこと問ひて医師は測るや脳(なづき)の老いを

 

介護用タクシー内の車椅子にしづめる父はVIPめきたり

 

病院の床を彩る国ありきうつむくひとを慰むるため

 

(『短歌人』2020年4月号)

 

 

 

 

 

 

羊と鋼の森

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白羊のようなグランドピアノのハンマー

 

エラールのピアノもかくやかろやかに調律されたるやまとのぴあの

 

鍵盤の奥にひつそり羊たち跳ねれば打たれポロポロン鳴く

 

一日の一つめの音慈しみいつしかハノンをやめてしまひぬ

 

病み上がりのリパッティが弾きたるはつねにエチュード「牧童の笛」

 

この春は重き屋根あけ棒を立て奏でてみたし「巡礼の年」

 

(『短歌人』2020年3月号)

 

フランスに住む俳人、小津夜景さんに引用して頂きました →  (音符をクリックしてください)

 

 

 

 

岸田劉生展(2019-2020)に寄す

「壺の上にりんごが載って在る wiki」の画像検索結果

 

マグリットもセザンヌも無し林檎(ポム)ひとつ白磁の壺に載せる瞬間

 

デューラーの自負の漲る自画像の右手にゆれるカヤツリグサの穂


ほら父さまこの赤まんまがきれいでせう。五歳の麗子、花野を駆けて


原つぱの麗子よ麗子、な走りそヌスビトハギの足跡がつく


油絵具のなかに顔輝を練りこんで筆を重ねるどこまでも独り

(『短歌人』2020年2月号)

 

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岸田劉生「麗子五歳之像」(部分、赤まんま

 

 

もう奇跡とは言わせない

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ラグビーボール形の絵馬 🏉 下鴨神社の澤田社


紅白の戦士のゆくて濃緑の壁なすアイルランドのディフェンス


後続に球を投げつつ前進す。ラグビーのみに限らざるなり


ゴール前数十メーター駆け駆けるラガーマンの父祖は飛脚か

 

白塗りに朱の隈取りのカブキモノ三人浮かぶ観客席に

 

「ダイバーシティ」耳にするたび思ひ出さむラグビー固有の多民族性


(『短歌人』2020年1月号)

 

 

初めてのネット歌会 *the first internet tanka party for me

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ふりかへる人も少なき病院の樅の光の朱(あか)あたたかし

Christmas tree
in a hospital, which
few people look up
but the illumination is
red and heart-warming


歌人」第40回ネット歌会詠草(日本語のみ) →

 

 

汽車茶瓶

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西の京駅から乗るは春の風さくらひらひら坊さまふたり

 

合舞のやうに足並みそろへつつメトロのホームをゆく老夫婦

 

豪州にも「みかんの花」の手遊びあり「パティ・ケーキ」の焼けるあひだの

 

ベビーカーのボクはパパ似の口ひろげパパと同期のあくびをはなつ

 

長浜の汽車茶瓶の赭土(そほに)いろインドのチャイの土の坏の色

 

(『短歌人』2019年12月号)

 

 

万霊節 ― Allerseelen

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Foro Romano, November 1999

 

盲ひたる目のごと御堂に嵌められし玻璃窓の薔薇 内にのみぞ咲く

 

教会の床に先祖を葬りし異国の人は踏み絵を知らず

 

薔薇園は死者の骨灰の風を浴み濃きむらさきへたそがれてゆく

 

すでにほろびしものは決してほろぶまじ青猫いこふフォロ・ロマーノに (小池光氏の評により末尾一文字を変更)

 

万霊節めぐりくるたび思ひ出す夢にあを猫飼ひならす人

 

(『短歌人』2019年11月号)

 

 

 

余白の歌(永井陽子を読みながら)― Marginalia

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舞楽面「新鳥鮮」(春日大社)

 

新鳥蘇はヴァイオリンの f 孔を面(おもて)にあけて秋日をわらふ

 

よみかたも知らぬ漢字一文字に睨まれてゐし児の熱の夜

 

うすあをき蚊帳の天蓋あふぐ子はしらずジォットの星空の天藍石(あを)

 

あの夜たしかに窓の欅はエトルタの潮騒をもて吾(あ)を迎へたり

 

歌といふ文字にひらいた口ふたつ。たれのことばを吾(われ)はつたふる

 

(『短歌人』2019年10月号)

 

 

 

鬱金香まんだら

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原種のチューリップ(馬見丘陵公園)

 

アナトリアの砂礫の中でひらきたる原種の鬱金香(ラレ)は瓣(はなびら)ほそし

 

長ければ長いほどよし燕尾型ラレはアラーの、スルタンの花

 

ツリパとはターバンのことターバンの形につぼむ鬱金香(うつこんかう)は

 

ウイルスのそれともサタンの哄笑か病める球根ひとを狂はす

 

デルフトの街に溢れしチューリップ病葉めきたるだんだらの花

 

(『短歌人』2019年9月号)

 

咲いた咲いた幼が愛づるチューリップ赤白黄色ふつくらゆれて

 

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ソメヰヨシノは本当に美しいのか

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焼けたる人を見し日のありや桜花幹に漲るうすべにの液 

 

焼け跡を覆はんがため植ゑられし桜はおほく傘寿を越えず 

 

街灯のスポットライト浴びながら染井吉野はいちどきに散る

 

いつせいに散るのを責めはしなかつた。花たちはただただに咲き散る 

 

クローンの桜は白しLED街灯ひとつ花篝として

 

(『短歌人』2019年8月号)

野の山の田圃の御堂の学舎(まなびや)の額縁となる そめゐよしのよ

someiyoshino sont devenus un cadre
du champ, de la campagne, de l' église, et de l' école

(「ももさへづり*やまと編」)

 

パリのノートル・ダムに寄す

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(google search)

 

み空より炎の十字見守(まも)りけむ復活祭をまつ大み神

 

尖塔は火の矢となりて昇天すけぶりの雲を貫きながら

 

知らざりき森ひとつぶんの木の梁が石の伽藍を支へきたるを

 

森ひとつぶんの木組は燃えつつも玻璃と石とを守りぬきたり

 

巨大なる鳳笙、パイプオルガンの数千(すせん)の管は一つも溶けず

 

(『短歌人』2019年7月号)

 

耀変天目ふたつ

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藤田美術館蔵(於 奈良国立博物館)(5月)(海亀?)

 

天目の夜空をあふぎ天目の深海のぞく卯月早苗月

 

茶道誌とタンカの本とそれぞれの色の書店の手提げで交はす

 

午後四時半茶碗へつづく行列の絶えればヨッシャー!と拳をにぎる

 

奈良駅で人に酔ふとは新緑の奈良公園で夏バテするとは

 

マスクとり久方ぶりにしやべくれば声はかすれて心うるほふ

 

バス停のとなりでゆるる芍薬はふたたび逢ひし人の花咲(ゑ)み

 

 

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MIHO MUSEUM(4月)(掌中の宇宙)

 

 

 

 

 

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